東京女子医科大学病院
新卒・ベテランスタッフを応援する看護職キャリア開発支援センターを新設
病床数 | 入院基本料 | 平均年齢 | 離職率 | 看護職員数 |
1,358 | 7対1 | - | - | 1,176人 |
全国の医療機関に先駆けて、働く女性へのキャリア支援を導入し、高い評価を得ている東京女子医科大学病院。医師国家試験の合格者に占める女性の割合が年々高くなっていることを受けて設立された「女性医師・研究者支援センター」「女性医師再教育センター」に続き、2009年6月には「看護職キャリア開発支援センター」が新設されました。
定年まで勤めあげる割合が少ない看護職は、多くの人が大学院への進学、出産・育児、親の介護、本人の病気、夫の転勤、人間関係などでキャリアの分岐点を迎えることになります。これらを前提に看護師さんのキャリア獲得支援、柔軟な勤務体制、復職支援、新人の職場適応支援を行おうというのが同センターが設立された目的です。
臨床現場で働く看護師さんを支援するためのメニューはいろいろありますが、具体的にはまず「2分の1勤務制度」が挙げられます。これは専門看護師や研究職、教職などを目指して大学院への進学を希望している人、あるいは出産や育児で忙しい人を対象にした制度で、正職員のまま勤務日数を減らす(収入も約半分に現象)ことにより、臨床現場から離れず、かつ収入の道を確保しながら、進学や出産・育児と両立できるというメリットがあります。
新卒者を対象とした制度には、ゆとりある職場環境の中で看護の醍醐味を体験してもらうことを目的に、入所3ヶ月間は宿題や課題を出さず、仕事の負担を軽減する「3ヶ月ルール」があります。これにより新人の離職率は3%にまで低下するなど効果をあげています。この3ヶ月間で部署のミスマッチや人間関係などが原因で「やめたい」と思う若手看護師には、面接を行って詳しい事情を把握したうえで、3ヶ月の区切りの前に、別の部署を勧めるなどの対応をしています。途中で「やっぱり働き続けます」と気が変わるケースも少なくないそうです。
看護職キャリア開発支援センターにはキャリアカウンセリングを専門とするスタッフが常駐しており、「日々の看護に追われる毎日で、目標を見失ってしまいそう」という漠然としたものから、「訪問看護の分野に興味があるので、一度慢性期看護を経験しておきたい」という具体的な相談、あるいは主任師長や先輩、同僚には話しにくい悩みでも気軽に相談できるようになっています。スタッフが働き続けられる体制作りは、病院や患者さんにとってもメリットが大きいため、配属希望は出来る限り考慮する方針となっています。
また、看護師の経験を持ちながらも、出産・育児等で医療現場を離れている「潜在看護師」の問題解消にも、同センターは積極的に支援を行っています。ブランクが気になる方は少なくありませんが、センター長によると「数年程度の臨床経験がある看護師さんにとって、手順や医療器具・機器の違い、電子カルテの操作などは枝葉の部分に過ぎず、用意された復職支援プログラムを経たならば、すぐに看護師としての「勘」を取り戻し、第一線で活躍できるようになる」とのことです。
復職者も含めた既卒者は看護師としての経験とプライドを持っているため、新しい職場の独特な習慣や手順を前に自信を喪失して、再度退職してしまうことがないように、個々の知識や経験(何が出来て、何が出来ないのか)、ブランクの年数などにに応じたきめ細かいフォロー体制も整えています。また、同センターが培った復職支援のノウハウを院内だけで活用するのではなく、地域の中小規模の病院にも導入して、多くの看護師の復職に役立ててもらおうとの取り組みも進めています。
東京女子医科大学病院をはじめとする大都市圏の大学病院には地方出身の看護師さんが少なくありません。専門性の高い先進医療を提供している大学病院には、全国から多くの患者さんがやってくるため、看護師として様々な経験できるためです。そして、何年かスキルを磨いたら、地元の病院にUターンしてそれまでの経験を活かしたいと希望する人もたくさんいます。
故郷に帰って、東京女子医科大学病院での経験を地元病院に伝えて、その良さが全国に広まれば、東京女子医科大学病院としてもメリットは小さくありません。そのため支援センターでは、Uターン希望組を対象としたキャリア形成プログラムが用意されています。将来のプランとしては、同病院の在職経験者で全国規模のネットワークを構築し、若手看護師のUターンを支援する構想もあります。
東京女子医科大学病院:東京都 新宿区 河田町8-1
特定機能病院 / 地域がん診療連携拠点病院 / 治験拠点医療機関 / 総合周産期母子医療センター / 移植指定施設(心臓、膵臓、腎臓、骨髄) / 臨床研修指定病院