大垣市民病院（岐阜県）
育児支援制度（時短勤務・部分休業）の利用増加に伴う看護師不足を夜勤専従でカバー
| 病床数 | 入院基本料 | 平均年齢 | 離職率 | 看護職員数 |
| 888 | 10対1 | 35.0歳 | - | 695人 |
大垣市民病院は、岐阜県西部の西濃医療圏（人口40万人）の中核的機関病院としての役割と機能を備えた自治体病院です。2006年の診療報酬改定により、7対1看護が新設されて以降、同病院では、新規採用者の減少に加えて、国の子育て支援制度を利用する職員の増加による深刻な看護師不足に陥りました。
看護業部が過密化し、労働環境が厳しさを増すなか、職員の自己犠牲によって成り立つ職場環境ではあってはならないとの思いで、全ての看護職にとってワークライフバランスを考慮した取り組み行いました。以下にその経緯と具体策を紹介します。
2009年、大垣市に子育て支援制度として「育児のための短時間正職員制度」と「部分休業制度」が導入されました。これは子育てを理由に離職を考える看護師を減らすため、育児休暇後の最大3年間、部分休業と短時間勤務を可能にしたもので、仕事を辞めずに育児に専念できるのが最大のメリットです。
大垣市民病院における制度利用者は年々増えており、2012年現在、51名が利用しています。同病院における育児休暇取得率は100%で、常時約70名の看護師が育児休暇中です。さらに、育児休暇から復帰後も3割程度が夜勤免除を申請しています。
子供がいる看護師は制度利用でワークライフバランスを実現できる一方で、この状況は夜勤者の確保を困難にし、他の職員への夜勤負担が増すことで、育児支援をサポートする側の業務負荷と疲弊というマイナスの面ももたらしました。それらの軽減に向けて、職員の意欲を高め、離職を防止するための職場環境づくりを最重要課題として、以下のような改善を行いました。
夜勤専従制度の導入
夜勤専従は、夜勤時間帯のみを専従で勤務し、月の勤務時間を144時間以内とした働き方です。月の所定労働155時間との差は、公務員の「職務専念義務の免除制度」で対応しました。現在、夜勤専従は健康上の負担を考慮して、3～4ヶ月に1度の割合で、希望者がいるときに導入しています。
院内保育所における24時間保育を実現
院内保育所の運用を全面委託化し、24時間保育を実現しました。それまで働いていた病院採用の保育士は、小児科・産科・NICU・GCUに配置して、小児患者等の保育を開始しました。24時間保育を利用して夜勤ができる体制を整備するとともに、病棟保育氏の配置は看護師の業務負担軽減にもつながりました。
夜勤手当の増額
夜勤者が不足し、職員の夜勤負担が顕在化した状態において、病院を支えている看護師の労働に報いるため、また医療・看護の質の低下を防止する観点から、夜勤手当の増額が実現しました。
外来から病棟への配置替え
外来勤務の長い看護師に対し、夜勤回数の軽減を条件として、病棟への配置替えを行い、夜勤者の増員を図りました。外来の人員は、パート採用者や育児休暇から復帰するもので補い、併せて外来の応援体制を組むことでカバーしました。
部署の特性に応じた夜勤・交代制勤務の導入
現在の夜勤・交代制勤務の基になっているのは、1978年に基準看護が導入される際に考案されたもので、当時は「大垣方式」と呼ばれていました。当初は、一般病棟では8時間15分の日勤（8:30～16:45）、7時間45分の中勤（13:00～20:45）、および実働11時間の夜勤（20:30～9:00）でした。
導入当初は深刻な看護師不足にあり、かつ電車・バス等の公共交通機関を利用して通勤する職員が多かったため、深夜の交代のない勤務体制は好評でした。さらに既婚者の割合が高く、家庭を持つ職員にとって、夜勤の出勤前や、中勤から帰宅後に家族との時間を持てるメリットもありました。そして同病院では、患者が一極集中する午後の最も業務が過密する時間帯に中勤者が加わって、多人数のスタッフで対応できる点が合理的であり、病院の特性にマッチしていました。
時代の変化とともに、現在、看護部ではそれぞれのブショの特性の応じた夜勤・交代制勤務を導入しています。一般病棟・結核病棟では変則三交代制（夜勤実働11時間）、ICU・NICU・GCU・救命救急センターでは三交代制（夜勤実働7時間45分）、産科病棟では変則ニ交代制（夜勤実働11時間）、中央手術室では変則ニ交代制による時差出勤と、夜間は拘束・待機体制となっています。
大垣市民病院：岐阜県 大垣市 南頬町4-86
地域がん診療拠点病院 / 地域周産期母子医療センター / 小児救急医療拠点病院 / 西濃地域リハビリテーション広域支援センター